闘病日記Vol6(2000/1/23)

今朝5:30、目が覚めました。理由は90。 自分の便所に行こうとしたが、自分の領域から出られない音。歩行機がベッドにあたっている音です。
90には工夫という二文字が無く、とにかく「押す」「引く」。多分、賢くないです彼。 おかげで、3秒ごとに「がちゃ」「がちゃ」と音がします。当然あとの二人も目が覚めてます。
No2は「なにしよんじゃぁ」的な発言。
でも、90は負けません。まだまだ3秒ごとに「がちゃ」「がちゃ」。 やっと音がなくなったと思ったら、既に6:00。起床の時間です。
なんか不満を残しつつうとうとと。8:00になって、朝食の時間。なんか損した気分。

それはそうと、朝食。「なんじゃこりゃぁ」でした。昨日と一緒。
食パンにオレンジの半分。「昨日の残りのオレンジか?」と思わせるあたりなかなかやり手です。

とにかく、ここの食事はまずい。有名なんです。 看護婦さんも「設備はいいんだけど食事がねぇ」というくらい、まずい。
調理師さんはちゃんと味見をしているのだろうか?たぶん、してないんだろうなぁ。
だって、極限まずいもん。皆さんにも食べさせたあげたいわぁ。
だって、なんで酢の物の中に「グレープフルーツ」が入ってるの?ま、確かにどっちもすっぱいけどぉ。。。

それにしても、ここの面子はなかなかつわものです。
まず、No1のお話をいたしましょう。
No1の入院原因は細菌なのですが、始めは意味がわからなかったんです。 「細菌を殺してから手術だからねぇ」彼は言います。「骨までいってるからねぇ」彼は続けます。 「今まで自分で消毒してたんだけど、 この前『先生、こっち側綿魂が奥のほうまで入るんですけど骨までいってませんか?』 って聞くまで先生は気がつかなかったんだよ」って、おぃおぃ、 自分で消毒してさらに骨の奥まで綿魂を入れてるのに痛くないの?
それには理由がありました。
どうも、No1はトラックとかの修理とか掃除とかを専門にやるような仕事をしていて、 ある日トラックの部品交換をしていたら急にトラックのウィンチが外れて自分のうえにトラックが落ちてきたんだそうな。 そのせいで体が半分に折れたんだって。「カチンコ」みたいに。
そのときは自分の「愚息」に顔があたるような折れ方をしたそうだ。まさしく「カチンコ」。 そのときはアバラが全部内側へ入り込むようなすごい怪我だったそうな。 だから今では胸から下の神経は全部無いんだって。びっくり。
だから、足を動かせない。 当然神経がないと体に刺激が行かないので修復機構が働きにくくって、結果腐ってくるそうな。 だから当然、骨まで自分で触っても痛くないんですねぇ。えぐいよねぇ。
でも、こういうのを不幸中の幸いって言うんでしょうか?私は事故じゃないだけ幸せです。
おっちゃんのしゃべりと明るさはここから来るんですね。明るくしなきゃやってられないもんね。
こういう人はかわいそうとかそういうレベルじゃないなって思いました。
この前も知らないうちにやせ細った『むこうずね』が折れてたそうな。 自分で応急処置をして次の次の日(次の日に行けよな)病院に行ったんだって。
信じられないような本当の話です。

No2は足首の骨折。
軽トラの助手席から降りるとき引っ掛けたら「ぼきっ」って音がしたそうな。 それで足首が折れたって。足首が折れるってどんなんだろうか?想像できん。でも痛そう。 今、リハビリで全加重までいっているのでもうそろそろ退院だそうだ。
このおっちゃんはなかなかの気の利きやさん。
この病室の中でも一番に気が利くんじゃなかろうか?それだけに退院は痛い。
でも、面白いのはNo1が語りだすと練習と称して松葉杖でどこかへ行くことだ。 それはずるいんとちゃう?おっちゃん。
毎日リハビリに行ってるけど夜に看護婦さんに「調子はどおぉ?」 と聞かれると決まって「いだいんや。なんだかな、やっぱりいだいんや」とスーパー訛りで語ってくれる。
看護婦さんも笑ってるから、ま、いいんでしょう。

最後に90。
このじぃさんはなぞです。なんでここにいるのか、なぞです。 でも、風邪をこじらせて退院が半月ほど延びたんだそうな。
で、90もそろそろ退院らしいんだけど、まだ歩行機無しでは歩けないんだけど、それでも退院? 大丈夫なのかなぁ?
No1に「きんさんぎんさんのきんさんが死んだって」と問い掛けられて 「あの人もよう儲けた。家族も満足や。」と切り返すとはやっぱりタダ者ではない。
既に人生を悟ってるね。

なかなか楽しい仲間に囲まれているんだけど、最終的に残るのはNo1と私だけ。
多分、あと2週間もしたら新入りさんが来るでしょう。イビキかく人だったら嫌だな。

あ、明日から足を曲げる練習の始まりです。当然、傷口はまだ治ってません。
足を曲げたら傷口から血が「ぴゅー」って出たらどうすんだろ?
って看護婦さんに言ったら、「そんなことはありません」って、ぴしゃっと言われました。
はいはい。私はあなたたちの言いなりですよ。

でも、むっちゃ痛いらしい。地獄の始まりです。はぁ〜。


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